CRAから見たブラックペアンのひと騒動について

私自身は、ドラマなどあまり見ないのですが

昨日たまたまスマホを開いたら、こちらのニュースがありました。

(News Picksから流れてきてたのかな?)

 

nlab.itmedia.co.jp

 

最近始まった、医療ドラマ「ブラックペアン」にて

「治験コーディネーター」の描写が、実際の職業とあまりにも懸け離れているとして、5月2日に日本臨床薬理学会はTBSに対し現実と乖離した描写を避けるよう求めた。

と言うニュースですね。

 

なんとこの治験コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinator)、あの加藤綾子アナウンサーが演じているのだとか。

ついに女優デビューですか。

 

さて、私はと言いますと「一般的にはあまり知られていない治験業界も、ドラマを通じて脚光を浴びるのか。」「治験がもっと世間にも受け入れられればいいなあ。」と思っておりましたので、少し残念です。

 

臨床開発業界でも「新しいドラマ、CRC出てくるらしいね。」とか「CRCカトパンがやるらしいね。」などなど、自分の周りだけですが少しだけ話題になっておりました。

 

GWで少し暇ですので、CRCとともに働くCRA(臨床開発モニター)から見た、今回の騒動について、「現場を知る第三者的な立場から」記事を書こうと思います。

(あくまで私見です。)

 

上記の記事で述べられている以下の記載、こちらは正しいです。

開発された薬が現場でも有用かつ安全かどうか確認するため、事前に人へ治療も兼ねて行う臨床試験を「治験」といいます。治験コーディネーターとはその治験が適切に行われるよう、医師や製薬企業と被験者の間に立って調整する専門職。責任医師などの指示の下、治験までの準備や被験者への対応、検査データの整理、医師への報告などあらゆるサポートを行い、新薬導入を円滑にする上で重要な役割を果たします。

 

CRAとして、CRCさんにはたくさん助けてもらっています。

CRAは直接患者さんと接することができないため、CRCさんの助けが必要になります。

また、CRAはなかなか患者さんの対応を含めた「現場感」を知ることができないため、CRCさんからはいろいろなことを教えてもらうことができます。

 

さて、日本臨床薬理学会から出た今回の意見書についてです。

治験コーディネーターがスーツ姿で担当医師を高級飲食店で接待したり、治験を決めた被験者に同意書を取らずその場で負担軽減費として300万円を手渡しするシーンが登場しました。放送後Twitterではこれらの描写に対し、「現実と違いすぎる」「知られる機会がない職種でデタラメを描かれると大迷惑」

→確かに、治験コーディネーターはそもそもスーツでは基本働きません。

出張の際や、オフィスではスーツで働いている可能性もありますが、今回のドラマで描写されているのはおそらく病院内での話なので、基本は白衣を着ていることかと思います。

そういう意味では、TBSの公式ホームページ トップの画像も違和感がありますね。カトパンはどちらかというとCRAなんじゃないかと、格好だけをみれば感じます。

www.tbs.co.jp

 

接待シーンについては「CRC医療機関のスタッフとして患者様をサポートしており、スーツを着てかっこよくこなせる業務ではありません。担当医師を高級レストランで接待するCRCも100%おりません」と否定。患者へ負担軽減費300万円を手渡す場面にも、一般的には一回あたり7000円~8000円であり、「高額の軽減費で治験への参加を誘導することは厳に戒められております」「別の費用を誤解されたのでは」と乖離を訴えています。

→高級レストランについてですが、接待するとしてもこれはCRCではないでしょう。医薬品開発をしている企業側の人間もしくは、CRCを派遣している企業の営業さんなどでしょうか。

ただ昨今は接待については厳しく規制されているので・・・ 。完全にないとは言い切れませんが、CRCが単独で医師を接待することはまずありえないでしょう。

 

→負担軽減費についてですが、まず300万円はあり得ませんね。そんなに支払えるなら、それで治験に入りたい患者さんが続々押し寄せるはずですが、実際はそんなことは有り得ません。

「1人の患者さんが、何年もある治験の期間を通して合計300万円分の享受を得る」ということは有り得るかもしれません。

治験参加中は、患者さんの医療費の一部が企業から支払われる場合があるからです。

ただ、1点だけ注意したいのは、その金銭が支払われるのはCRCを派遣している企業からではなく、医薬品・医療機器を開発している企業から、ということです。

この金銭の目的は、あくまで「治験のために遠方への通院が必要になったり、通常診療よりも回数が多くなるため、その負担を軽減する目的」で支払われるということは

一般の方々も知っておいて欲しいなと思うところです。

ちなみに、一回あたりの金額は私の経験上、7000円〜800010000円程度が多いかと思います。

 

治験において、金銭面ではトラブルが多いので

この部分の描写は的確にしていただきたいところですね。

 

 「CRC達が、医師達に高額の接待を行い、人によっては高額の負担軽減費を支払っていると誤解されることはCRCを認定している学会として残念でなりません」「番組により患者さんがCRCという職種に不信感を持ち、治験を通じた新薬・医療機器開発へご協力を頂けなくなるとしたら、それは医療イノベーションを目指す日本にとって大きな損失につながります」とドラマによる誤解を不安視し、「CRCの使命、現状等を正しくご認識頂き、あまりにも現実と乖離した描写を避けて頂くよう希望する次第であります」

 

CRCさんの仕事は、朝早くから夜遅くまでかかることもあります。

さらに、どれだけ頑張っても結果が出ないこともあると思います。(それはCRAも同様です。)

 

一つのドラマで、業界全体でトラブルの発生や進捗への影響が出ないように、最低限の配慮をしていただきたいものです。

 

 

ここから追記♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

こんな記事を見つけました。

biz-journal.jp

 

あーこの記事も、今回のCRCの描写について言及してるんだな。と思って拝見しました。

また、加藤綾子演じる治験コーディネーターの木下香織と渡海が会食するシーンではフランス料理を食べていたが、実際に私も医療関係者にフランス料理店や高級懐石料理に連れて行かれた経験がある。私の場合は付き添いの立場だったが、こういう医療業界の細かい「あるある」が織り込まれているのはうれしいところだ。

 

ん?と思ってしまった。 

そもそもこの記事を書いた方は、どういう立場(職種)の方でどういうシチュエーションで医療関係者とフランス料理店や高級懐石料理に連れて行かれたのだろうか。

 

これは、「あるある」ではないのでは?